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よだかの星/宮沢賢治のあらすじと読書感想文

2011年8月29日 竹内みちまろ

よだかの星/宮沢賢治のあらすじ

 かわせみや蜂すずめの兄である「よだか」は、羽が強く、鳴き声がするどい点が鷹に似ており、「よだか」という名前が付けられました。「よだか」は、外見のみにくさから鳥たちにうとまれ、巣から落ちためじろの赤子を助けて連れ帰ってあげたときでさえ、赤子を盗人からひったくるように取り返されます。

 ある夕方、鷹が「よだか」に、明後日までに名前を「市蔵」に変えて、皆の所へ「市蔵」と書いた札をぶら下げてあいさつに回れと言ってきました。途方に暮れた「よだか」は、空を飛び回りました。羽虫や、かぶと虫が「よだか」ののどに入り込みます。「よだか」は飲み込みます。皆からうとまれることが嫌で、また、たくさんの虫たちを毎日飲み込むことが「つらく」なりました。虫を食べないで飢え死にしよう、その前に鷹に殺されるので「遠くの空の向う」へ行ってしまおうと思います。

 「よだか」は、弟のかわせみに会いに行きます。かわせみから引き留められましたが、必要以上の魚を採らないようにしてほしい旨を告げて、いったん、家に帰ります。

 翌朝、「よだか」は、太陽に向かって「あなたの所へ連れてって下さい。灼けて死んでもかまいません」と頼みます。しかし、お前は夜の鳥なので星にそう頼むよう告げられます。

 夜、オリオン座の星、大犬座の星、大熊座の星、鷲座の星へ太陽に告げたのと同じことを頼みますが、相手にしてもらえません。力を落とした「よだか」は、地面に落ちようとする寸前、にわかに、のろしのように空へ向かいます。眠っていた鳥たちを起こす鷹のような叫び声をあげ、まっすぐ、空へ向かいます。しかし、星の大きさは変わらず、近づくことすらできません。「よだか」はもう、自分がどうなっているのかわからなくなりました。しばらくして、自分の体が、青い美しい光になって静かに燃えているのを見ました。よだかの星は、今でもまだ燃え続けていることが語られ、『よだかの星』は終わります。

よだかの星の読書感想文

 『よだかの星』は、読み終えてせつなくなる作品でした。『銀河鉄道の夜』にも共通する詩人の悲しさとでもいいましょうか、なんとも言えないやるせなさがあります。心やさしい「よだか」なのですが、外見のみにくさから嫌われています。「よだか」自身は、なんで皆が自分を嫌うのだろう、自分は何も悪いことはしておらず、むしろ、親切にしているのにと、疑問と、やるせなさと、悲しさをため込んでいきます。

 しかし、そんな「よだか」も、虫を殺すという自己矛盾に心を痛めます。もう、どうにもならなくなって、星になってしまいました。社会に適合できない「よだか」、自己に矛盾を感じてしまう「よだか」、弱者に心を痛めてしまう「よだか」、矛盾や悲しさを何とかしたいと思ってしまう「よだか」、「よだか」の心には、感情をすべて受け止めてしまう純粋さと、(たくましさには欠けるかもしれませんが)命や存在に対する共感とそれらが持つ根源的な悲しさを感じてしまう感性があるのだと思いました。

 「よだか」は、外見は普通の鳥や、一般の鳥とは違い、それでいて、鷹に匹敵する力を秘めています。そして、純粋すぎるゆえに、社会に適合することができません。それは、宮沢賢治の作品の根底に流れる、詩人の悲しさそのものを表す一つの形ではないかと思います。


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