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私の奴隷になりなさい/サタミシュウあらすじと読書感想文

2012年10月1日 竹内みちまろ

私の奴隷になりなさいのあらすじ

 出版社に中途採用された24歳の「僕」は、宣伝部に配属され、27歳の既婚社員・香奈に会います。「僕」は、自身の歓迎会の際、太ももでとめるストッキングに赤い下着を着けていた香奈へ、「ちょっと二人で飲みません?」と、さっそく声をかけました。香奈は、「ちょっと無理かもね」と答えつつ、メールをどこかへ打ち、帰って来た返事を見て、「一軒だけよ」と答えました。

 「僕」は、チャンスをうかがっては香奈を誘うようになります。3回に1回くらいは飲みに行けました。が、香奈は口説かれることを楽しんでいるようには見えません。しかし、口説かれることをやめるわけではありませんでした。2か月ほどたったころ、仕事中に、同じ部屋にいる香奈から「今夜、セックスしましょう」というメールが入りました。

 「僕」は、「なぜ?」という疑問にとらわれてしまいました。さらに、ラブホテルに入ると、香奈は、ビデオカメラを取り出し、「セックスしている間、ずっと私を撮っていて欲しいの」と言い始めました。この日から、会う時は「私から言う」という香奈と「僕」との関係が始まりましたが、香奈は毎回、「僕」に香奈をビデオに撮らせ、「僕」が理由を告げると、「あとでこれを見てオナニーをするの」と返事をしました。

 2か月ほどしてから、「僕」は、香奈から、香奈の部屋に呼ばれました。連絡が来たのは金曜日の夜で、土曜日の朝、「僕」は香奈の部屋に行きます。セックスが終わったあと、大阪に単身赴任している夫に会いに行くという香奈は、「明日の夜に戻るけど、また私としたかったらいて」と告げます。これは「罠」でしたが、「僕」は丸一日半部屋にいて、香奈を待ちます。部屋にいる間、部屋に置いてあった10本のビデオテープを見ます。そこには、ポテンシャルは高い女なのですが、そのことにはぜんぜん気づかずに、やぼったい服を着たつまらない人妻でしかなかった香奈が、ある男の命令で、「すごく濡れています、御主人様」「いっても、よろしいでしょうか」「奴隷の顔にかけてください」「すごくおいしかったです。ありがとうございます」「御主人様の体を洗わせてください」などと、直接的な言葉を並べて涙目で懇願し、シーツに直径40センチくらいの染みをつくるような「仕込まれた女」になるまでが記録されていました。

私の奴隷になりなさいの読書感想文

 『私の奴隷になりなさい』のストーリーはまだまだ続き、後半は、「跨った女の性器を六時間も舐め続けたり」などという記述も登場します。予想外の展開の連続で思わず納得させられてしまいましたが、今回は、香奈の虜になってしまった「僕」が、香奈との関係に「決着」をつけに行く場面の感想を書いてみたいと思います。

 「僕」は、ある店へ誘われました。そこには、首輪をはめてひざまずく香奈と、香奈の「御主人様」がいました。「御主人様」は「僕」へ、香奈をここまでに仕上むことができた理由を語ります。「御主人様」は、自分が持っている性癖を理解し、見抜いた相手に明快な目的と意志を持って接すれば、調教はできることを告げます。97人からは「身の程をわきまえろハゲ」と言われるでしょうが、「三人の小国の王になることを選んだ」と語ります。

 『私の奴隷になりなさい』で描かれていたものは、思想だと思いました。「御主人様」が「僕」に香奈の調教の話をする店の名前は「スモールワールド」で、「スモールワールド」は文庫化される前の『私の奴隷になりなさい』の単行本の題でもあるのですが、「御主人様」はまさに「スモールワールド」という人生を選んだ一人の人間でした。「御主人様」は、「僕」へ、「君も自分の道を早く見つけなさい」とアドバイスします。25歳の「僕」には実感できない言葉かもしれません。しかし、ある程度の年齢を超えたら、身に沁みる言葉でもあります。しかも、奴隷調教に限ったことではなく、やりたいことをやるのは/できることをやるのか、理想を追うのか/折り合いをつけるのかなど、誰の人生にも関係することであると思いました。

 また、『私の奴隷になりなさい』では、香奈に「奴隷宣言」をさせるまでの過程についても、ほとんど何も語られていません。香奈のドラマは何も語られていないといってもよいくらいで、それでいて、冒頭や結末に登場する香奈の強烈なインパクトは、香奈がねっとりとした性癖と、奥深いドラマをもっている(持て余している?)ことを暗示しているようです。そんな構造が、作品に奥行きを与えているのだと思いました。


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