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少女パレアナ/エレナ・ポーターのあらすじと読書感想文

2004年8月2日 竹内みちまろ

 「少女パレアナ」(エレナ・ポーター/村岡花子訳)は、両親を失って孤児となったパレアナが、叔母に引き取られる物語です。1913年の発表と同時に、大きな反響を生んだそうです。喫茶店にも、商店にも、ホテルにも、あらゆるものに「パレアナ」という名前が付けられたと解説に書かれていました。

 パレアナの母は、貧しい牧師と駆け落ちをした良家の子女でした。家族とは絶縁状態に。パレアナの両親の死後にパレアナを引き取ったのは、母の妹である叔母でした。パレアナは叔母の屋敷の中で、粗末な部屋をあてがわれます。歓迎される環境ではない家にたどり着いたパレアナは、持ち前の明るさで必死に振る舞います。そんなパレアナの影響を受けて、気難し屋だった叔母をはじめみんなが変わっていくというストーリーです。

 貧しく何もないパレアナは、いつも「何でも喜ぶ遊び」をします。それは、父親が聖書の中の言葉から考え出した遊びであり、パレアナが両親からもらったただ一つの財産でした。粗末な部屋をあてがわれたパレアナは、「鏡がないのもうれしいわ。鏡がなければ、ソバカスが見えませんものね」と言ってにっこりと笑います。鏡がないことに喜びを見つけるのが、「何でも喜ぶ遊び」でした。パレアナは、この「何でも喜ぶ遊び」で町中の人気者になります。意固地で誰とも話をしなかった老紳士から、ひねくれ者でねたみばかり言っている寝たきりの病人に至るまで、みんなパレアナと友達になりました。

 物語は、パレアナの事故で大きく展開します。パレアナは、自動車に跳ね飛ばされて下半身不随になりました。ベッドに寝たきりになったパレアナは、「歩けなくなったことに、どんな喜びを見つけられるの」と嘆きます。それを聞いた村人たちは、パレアナを喜ばそうと、見舞いにきてパレアナを勇気付けます。パレアナは、村人たちを喜ばそうと村中を飛び回っていました。そんなパレアナが事故にあったあとは、今度は逆に、村中の人たちが、パレアナを喜ばそうと見舞いに来ます。

 「少女パレアナ」の面白さの鍵は、登場人物たちがそれぞれの物語を持っていて、パレアナの「何でも喜ぶ遊び」を軸に、複雑に絡み合った登場人物たちの物語が、それぞれのエンディングを迎えるところにあるのではないかと思いました。たとえば、意固地な紳士は、パレアナの母との失われた恋を胸に秘めており、パレアナの叔母は、パレアナが友達となった紳士との秘められた恋に身を焦がしていました。ストーリーは、パレアナの描写をとおして展開しますが、読者はすぐにパレアナを取り巻くサブ・キャラクターたちが持っている謎の存在を知ります。そんなサブ・キャラクターたちの隠された物語は、話が進むにつれて徐々に明かされていきます。そして、パレアナの事故を契機として、それぞれが一気に結末にたどり着きます。

 一方、はち切れんばかりの笑顔で跳ね回るパレアナ自身の物語は、「少女パレアナ」のはじめのほうで、わずかに2、3回、それも控えめに語られるだけです。それは、風に吹かれながら1人で夕日を眺める少女の姿の描写であり、夜、部屋の中で枕に顔を押し付けて泣くパレアナのうしろ姿です。そんなパレアナの物語を垣間見せられた読者は、過酷な環境にいても喜びを見つけて誰に対しても笑顔を絶やさないためには、強靭な意志の力が必要なことを読み取ります。けなげに振舞うかよわい少女の中に、生命の力を感じます。そんな、ほんのわずかに語られるパレアナの物語が、読者の心を捉えるのだと思いました。

 「少女パレアナ」は、サブ・キャラクターたちの物語がそれぞれに終焉を迎えた後に、下半身不随となったパレアナの新しい出発が語られて終わります。

 運命に立ち向かう孤独な少女、その心に燃え上がる命の炎を垣間見せるような、そんなラスト・シーンでした。


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