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不思議の国のアリス/ルイス・キャロルのあらすじと読書感想文

2005年8月4日 竹内みちまろ

 「不思議の国のアリス」(Alice's Adventures in Wonderland/ルイス・キャロル/福島正実翻訳)のあらすじを簡単にご紹介します。アリスは、土手で寝そべっていました。そばには、お姉さんがいます。退屈で何もすることがありません。アリスは、赤い目をしたウサギが走り去るのを見かけました。ウサギは、チョッキのポケットから時計を取り出して眺めます。アリスは、時間を気にするウサギを見たことがありませんでした。気がついたら、ウサギが入っていった穴の中に飛び込んでいました。本編で語られるのは、不思議の国に迷い込んだアリスの冒険です。アリスは、チェシャ猫やイモムシ、トランプの兵隊たちと出会います。

 「不思議の国のアリス」の面白さは、言葉のユーモアにあると思いました。英語の単語が持つ複数の意味をひっかけて、アリスが出会ったキャラクターたちは、アリスに会話を投げかけます。アリスは、学校で習った知識を総動員して答えます。でも、ときには「そんなこと知らないわ」とふくれっつらをします。百年戦争やばら戦争など、攻めて攻められてを繰り返したフランスとの抗争の歴史やイギリス王家の内戦の歴史などを学校で習っている人には、物語の背景がよくわかるのかもしれないと思いました。私が読んだのは翻訳です。「不思議の国のアリス」は、英語を母国語として、ブリテン島を(心の)祖国とする人間が英語で読むべき物語だと思いました。しかし、ラスト・シーンを読み終えて、「不思議の国のアリス」が、言葉の壁を越えて、世界中に翻訳されている理由がわかったように思えました。

 アリスは、「だれがあんたたちのことなんか気にするもんですか」、「あんたなんか、ただの一組のトランプじゃないの!」と言います。そうしたら、王様も女王様も兵隊たちも、いっせいに空に舞い上がり、アリスの上にひらひらとふってきました。アリスは、悲鳴を上げて、トランプを払いのけようとしました。アリスは、目をさましました。アリスは、お姉さんに膝枕をしてもらって土手の上で寝ていました。お姉さんは、アリスの顔に落ちてきた木の葉を、やさしく払いのけてくれました。アリスは、不思議の国の出来事を、お姉さんに語って聞かせます。本書のラスト・シーンは、お姉さんの心を描いています。小さな妹は、いつか成熟した女になるだろう、けれど、アリスは少女時代の思い出を忘れずに、子どもたちを周りに集めては、不思議な夢の話を語って聞かせるような大人になるだろうと想像します。そして、子どもたちの素朴な悲しみや喜びに共感しながら、幸せだった少女時代に見た夢を思い出すような人間になるだろう、お姉さんが、そんなことを空想して、「不思議の国のアリス」は終わりました。ラスト・シーンを読み終えて、小さな少女に向けられたお姉さんの視線が、「不思議の国のアリス」を世界的な名作にしたのかもしれないと思いました。

 あとがきには、著者と「不思議の国のアリス」が書かれた背景が紹介されていました。著者は、数学者だったようです。教授として、独身のまま、一生を大学の中で終えたと書かれていました。「不思議の国のアリス」は、ピクニックに行ったときに、学寮長の幼い娘にせがまれて、即興で話してあげた物語がもとになっているようです。著者は、30歳のときに、13歳の少女(物語をせがんだ少女)に求婚しているようです。著者のプロポーズは、少女にあてた手紙とともに、周りの大人たちによって、一切がなかったことにされたようです。社会生活を営む上では、けっして許される視線ではありませんが、同時に、少女に向けられた「愛のまなざし」が、世界的な名作を生み出したのかもしれないという内容のことがあとがきに書かれていました。


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