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ビルマの竪琴/竹山道雄のあらすじと読書感想文

2013年1月12日 竹内みちまろ

ビルマの竪琴のあらすじ

 終戦時のビルマ。日本軍は混乱します。停戦を知らず、また、状況がわからなかった部隊は、各地で敗走し、イギリス軍などに抵抗しました。

 中立国タイへ逃げ込むため、ビルマ国境を目指していた部隊がありました。音楽学校出の隊長が合唱を持ち込み、歌う部隊と呼ばれました。中でも、水島安彦上等兵は、竪琴の名人で、「埴生の宿」「ホタルの光」「あおげば尊し」など、さまざまな曲を伴奏しました。部隊は、イギリス軍に降伏し、南方のムドンの捕虜収容所へ送られました。

 部隊がムドンへ送られる前、三角山に立てこもる日本軍へ総攻撃が開始されることになりました。隊長がイギリス軍指揮官に交渉し、降伏を促す使者を部隊から送ることになりました。水島上等兵が三角山へたどり着きます。しかし、説得は難航し、総攻撃が始まりました。部隊は一足先にムドンへ出発します。使命を終えた水島上等兵はイギリス軍のはからいで必ずムドンへ到着できるよう手配されることになっていました。しかし、水島上等兵は、ムドンの部隊へは帰らず、行方もわからなくなりました。

 ムドンに到着した部隊は土木作業に従事します。ムドンに着いて3か月が過ぎたころ、部隊は郊外での土木作業の帰り、橋の上で、水島上等兵にそっくりの僧とすれ違います。水島上等兵はビルマ人にそっくりだったので、水島上等兵にそっくりなビルマ人もいるものだなどと口にしていました。部隊は、この僧をよく見かけるようになりました。

 イギリス軍捕虜の遺骨が霊案所に運び込まれる際、僧は、白木の箱を抱えるという日本式の姿で葬列に加わっていました。霊案所を作ったため、特別に見物を許されていた部隊は、僧が水島上等兵かもしれないと思い始めます。隊長は、捕虜収容所へやってくる物売りのおばあさんから青いオウムを手に入れ、オウムに「おーい、水島。おーい、水島。いっしょに日本にかえろう!」という言葉を覚えさせます。部隊が5日後に、日本へ帰ることになりました。隊長は、オウムを僧の肩に乗せてもらうよう、おばあさんに託しました。

 部隊が合唱をしていると、柵の向こうに、隊長のオウムと、兄オウムの、2羽の青いオウムを乗せた僧が姿を現しました。僧は、少年の竪琴を取り上げ、「はにゅうの宿」をかき鳴らしました。部隊は竪琴に声を合わせて合唱します。1年ぶりに聞く、水島上等兵の伴奏でした。部隊は、柵ごしに、「水島、われわれはあした日本にかえるのだぞ!」「さあ、はやくこちらに入ってこいよ!」と叫びます。僧は黙ってうつむいていましたが、「あおげばとうとし」を弾き始めました。「いまこそ別れめ…」の部分を3回繰り返し、そのまま、去っていきました。

 出発の日の朝、もの売りのおばあさんが、兄オウムと、手紙を隊長に渡します。兄オウムは、「ああ、やっぱり自分は帰るわけにはいかない!」と声を出します。隊長は、今手紙を読んでも水島上等兵は戻らないと告げ、船の中で、手紙を開けました。

ビルマの竪琴の読書感想文

 「ビルマの竪琴」は、使命(ミッション)ということを考えさせられました。

 水島上等兵は、三角山で崖に落ちた後、人食い人種に捕らえられますがピンチを脱し、部隊を追って南を目指します。ムドンへ向かう途中、野ざらしになっている日本軍の白骨を至る場所で見かけます。白骨を焼き、墓を立て、再びムドンへ向かいます。しかし、日本軍の白骨は、膨大な数が残されていました。そして、水島上等兵は、イギリス軍が建てた「日本軍無名戦士の墓」を見て、白骨を残したまま、逃げるように去った自分を恥じます。理屈では説明のできない力によって命じられたように、日本軍の白骨を埋葬するために、ビルマに残ることを決意しました。すべての戦死者を弔い終えた時に、もし、許されるなら、その時に日本へ帰りたいと手紙に書きました。

 水島上等兵は、もちろん部隊が懐かしく、故郷へ帰ることを、死ぬ思いで恋焦がれていたと思います。

 水島上等兵の心からは、周りの人間たちがどうしているだとか、周りの人間たちからどう思われるだとか、戦争は誰が悪いのだとか、そういった考えが一つもないと思いました。遺体を残したまま日本には帰れないという気持ち、いうなれば、良心や恥などというものだけが、行動原理になっています。そして、ミッションとでもいうべきものを感じるのですが、信念や思想というものは、本来、水島上等兵の心の中に生まれたようなものを差すのではないかと思いました。

 幸せ、生き方、人生…、現代人も、それぞれが日々、考えていると思いますが、現代人の思想や行動原理には、どこかに、人からどう見られるか、社会でどのような評価を受けるのかなどの計算が働き、水島上等兵のように、信念や思想だけに基づいて、さらに、先のことなどを考えず(計算せず)、その瞬間、瞬間を生きることができる人がどれくらいいるのだろうかと思いました。

 人からどう評価されるのかではなく、自分が何をなすべきなのかを突き詰めて生きる人間の偉大さのようなものを感じました。


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