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2007年4月1日 竹内みちまろ
「ビルマの竪琴」のあらすじと感想です(監督:市川崑、1985年/日本、主演:石坂浩二、中井貴一、川谷拓三、渡辺篤史、小林稔侍、井上博一、浜村純、常田富士男、北林谷栄、菅原文太)。
「ビルマの竪琴」は、ひとりの青年の心の旅の物語です。1945年の夏、ビルマ戦線でした。部隊はイギリス軍とインド軍の目をくぐりながら非交戦国のタイに逃れようと敗走を続けています。音楽学校を出た若い指揮官は、部下に合唱を教えて勇気付けていました。水島上等兵は、音楽を勉強したわけではありませんが、才能があったようです。手製でビルマの竪琴に似た楽器を作り伴奏していました。水島上等兵は、ビルマ人の格好をして戦場でも竪琴を引きました。イギリス兵の目を部隊から遠ざけました。
「ビルマの竪琴」では印象に残っている場面があります。部隊が森に囲まれた集落で休憩をしているときでした。ビルマの青年が小屋に駆け込んできます。青年は村長に耳打ちします。青年はイギリス軍を見たのでした。隊長は、窓から外を見ます。森のふもとにイギリス軍の大部隊が一斉射撃をするために散会していました。隊長は、部下に「歌え、笑え、手をたたけ」と命令します。気が付いていないふりをして時間を稼ぎます。部隊は、踊りながら外に出ます。広場に置いてあった手押し車の上に水島上等兵が乗りました。竪琴で「埴生の宿」をひきはじめます。手押し車には弾薬が乗せてありました。部隊は、「埴生の宿」を歌いながら手押し車を移動して弾薬を小屋のうしろに隠しました。部隊は、突撃の準備に入ります。緊張が頂点に達しました。日本軍もイギリス軍も物音ひとつたてません。月明かりだけが静かに差し込んでいました。隊長は覚悟を決めました。軍刀を抜きます。刀身が月明かりを反射しました。そのときでした。森の中から「埴生の宿」が聞こえてきました。兵士のひとりが「なんだ敵さんじゃなかったのか」と銃を下ろします。隊長は「よく聞いてみろ。英語だ」と告げます。水島上等兵が竪琴で「埴生の宿」の伴奏をはじめました。イギリス軍の合唱が止まります。静寂が森を包みました。水島上等兵は、なおも竪琴を引き続けます。イギリス軍が森から出て広場に下りてきました。みな隣の兵士と肩を組んで体をゆらしています。日本軍も歌いはじめました。「home sweet home」の歌声に「おお、我が宿」の歌声が重なります。日本軍は降伏しました。
イギリス軍に降伏したあと、水島上等兵は、イギリス軍に包囲されてもなお抵抗を続ける日本軍に降伏を勧める使者に抜擢されました。ひとり部隊から離れます。使者の役目を終えてから、遠く離れた捕虜収容所に向かいます。「いっしょに日本に帰ろう」という戦友との誓いを果たすためでした。ムドンのキャンプに至るまでの道には、岩山に草生す屍、川べりにみづく屍の山でした。ビルマ戦線、インド戦線は悲惨でした。インパールに向かうまでの道は、イギリス軍によって「白骨街道」と名づけられていました。水島上等兵は「幾万の同胞の屍を残したまま日本に帰るわけにはいかない」と煩悶します。捕虜収容所にたどり着きますが仲間のもとには戻れませんでした。
水島上等兵がキャンプの鉄条網ごしに仲間に別れを告げる場面が心に染み入りました。
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