2017年11月17日
史上最強のファンタジー「ハリー・ポッター」。言わずと知れたJ・K・ローリングの小説である。その第一作「ハリー・ポッターと賢者の石」が刊行されてから、今年で20周年であることをご存じだろうか。
映画史に燦然と輝くシリーズである「ハリー・ポッター」シリーズは、実は小説で読むとまた違った表情を魅せてくれるのだが、今や映画も小説も完結し、長年楽しみ続けてきたファンたちの心にぽっかりと穴が空いてしまった。
しかし、そんな方々に朗報が届いたのは2015年のこと。なんと、完結したと思われた「ハリー・ポッター」の世界に続きがあったのだ。しかも、それをロンドンで舞台劇として上演するというではないか。
熱心なハリポタファンであれば、ロンドンまで足を運び、観劇するだろうが、そのためにはどうしてもお金や時間が必要になってくる・・・そんなファンのために、この「ハリー・ポッター」初版から20年を迎える2017年にスクリプト・ブックという形で、シリーズ最新作「ハリー・ポッターと呪いの子」(J・K・ローリング/ジョン・ティファニー/ジャック・ソーン著/松岡佑子訳)が発刊されたのだ。
子供の頃から熱烈な"ポッタリアン"である筆者が、この本の見どころと注目点を交えながら、改めて書評を書かせていただこうと思う。
「ハリー・ポッター」シリーズのあらすじ
「ハリー・ポッターと呪いの子」に触れる前にまずはオリジナルの「ハリー・ポッター」シリーズを復習しておこう。
11歳を迎えた少年ハリー・ポッターは、両親を亡くし、おじ・おばにより物置部屋で育てられた。彼らに加え、その息子ダドリーなどから使用人のように扱われながら育ったハリーの元に、一通の手紙が届く。送り主はホグワーツ魔法魔術学校。
その手紙により自身が魔法使いであることを知ったハリーは、ホグワーツ森番のハグリッドに連れられ、ホグワーツに入学。
そこで出会ったロン・ウィーズリーやハーマイオニー・グレンジャーらと共に数々の苦難や試練を乗り越えながら、親の仇である最凶の闇の魔法使いヴォルデモートとの死闘を繰り広げ、見事、打ち破ることができた。そして、魔法界には平和が訪れ、ハリーはロンの妹ジニーと結婚。後に子をもうけ、その子供もまた、ホグワーツ魔法魔術学校へと向かうホグワーツ超特急へと乗り込むのだった・・・。というのが「ハリー・ポッター」シリーズの大まかな流れである。
「ハリー・ポッターと呪いの子」のあらすじ
そして「ハリー・ポッターと呪いの子」は、最終作「ハリー・ポッターと死の秘宝」から19年後の世界を舞台としており、ハリーと仲間たちの子供世代が中心となる物語なのだ。
物語は映画のラストでも描かれた、ハリーの息子アルバス・セブルス・ポッターのホグワーツ入学の日から幕を開ける。組分けのあるこの日を不安に感じているアルバスは、ハリーと同じくグリフィンドールに入寮したく、スリザリンだけは嫌だという思いで頭がいっぱいだった。ハリーは自らの組分けの日を回想しながら、アルバスの不安を払拭させ、ホグワーツ超特急に乗り込ませる。
ここから、過去や未来、そして現在にまたがるアルバスの奇想天外な冒険が始まることとなる・・・。
ハリーの息子世代が活躍する、新作オリジナル・ストーリー
なんともまぁ、数奇な運命に翻弄される、ハリーとその家族。
アルバスが入寮した寮はあえて、綴らないでおくが、本作は大人になったハリーたちの姿や過去に登場した人物やおなじみのキャラクターたちの姿も色濃く描かれた、ファン垂涎の物語となっている。
今や英雄となった"生き残った男の子"ハリー・ポッターとして生きる苦悩、そしてその息子として生を受けたアルバスの苦心、まさに"その後"の世界が広がっているのだ。
さらに本作の要となるキャラクターとしてドラコ・マルフォイの息子スコーピウスも登場し、もはや鳥肌モノだ。
"名前を言ってはいけないあの人"ヴォルデモートと密接に絡み合った驚愕のストーリー、生々しく鮮明に描かれる冒険の数々、ハリーと共に育ってきた大人たちに手にとってもらいたいものだ。
本書を読む際には、もう一度「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を読むか観るかすることをオススメする。
本書は、舞台劇のスクリプト・ブックとして出版されているため、ほぼほぼセリフと情景描写のみで構成されているのだが、決して読みにくいわけではなく、むしろ想像に容易いと言っても良いかもしれない。
これまでの「ハリー・ポッター」シリーズとは異なり、ダークな世界観とホラーめいた描写の数々など、子供が読むには若干難しいかもしれないが、勇気と希望、そして家族愛を描いたストーリーであるため、ぜひとも読んでもらいたい一冊だ。
1作目刊行から20年・・・あの頃、夢中で「ハリー・ポッター」を読んだ世代は、ハリーと同じく子持ちであることが多いだろう。物語完結から19年後の"8番目の物語"。今度は親御目線で、物語を追体験してみてはいかがだろうか。
【この記事の著者紹介】
Sunset Boulevard(書評&映画評ライター):
映画を観ることと本を読むことが大好きな、しがないライター。オススメ小説の書評や読書感想文を通じて、本を読む楽しさを伝えられたら嬉しいです。また幼き日よりハリウッド映画に親しんできたため、知識に関しては確固たる自信があり、誰よりも詳しく深い評論が書けるように日々努力を重ねています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie
→ 書評「侍女の物語」|ハリウッドでドラマ化の衝撃作
→ 映画評「ラストウィーク・オブ・サマー」全米最旬の女優ベラ・ソーンが魅せる狂気的で魅力あふれる好演
読書感想文のページ
〒144-0035
東京都大田区南蒲田2-14-16-202
TEL.03-5710-1903
FAX.03-4496-4960
→ about us (問い合わせ)