2017年8月23日
予告編が公開された時から気になっていた映画がある。世界的に名を馳せている動画配信サービスNetflixがオリジナルで製作した作品であり、日本でも全米公開とほぼ同時期に配信されたティーン・スリラー「ラストウィーク・オブ・サマー」だ。
恐らくこれがNetflixオリジナル作品でなく、単なるインディペンデント系の作品であったら日本公開もといソフトリリースも考えられない作品であっただろう。そんな言わばレアな作品を手軽に楽しめるようになったというのは時代の進化を感じると共に映画ファンにとっては良き時代が訪れたと感じる次第である。
今回は、この全米最新「ラストウィーク・オブ・サマー」の魅力に迫っていこうと思う。
「ラストウィーク・オブ・サマー」あらすじ
高校生のタイラーは、ガールフレンドのアリソンと幸せな夏を過ごしていた。
一人の人間が人生を大きく変える。それまでモノクロに見えていた人生が一気に色鮮やかになったと感じるような毎日だった。
ある夜、パーティに出かけたタイラーとアリソンは、些細なことで喧嘩をしてしまい、仲違いしてしまう。
タイラーはその勢いで、パーティで出会ったミステリアスなホリーと一夜の関係をもってしまう。
しかし翌日、アリソンとよりを戻すことができたタイラーはホリーと距離を置こうと決意するが、新学期に転校してきた彼女から、執拗な脅しを受けて・・・タイラーの人生は崩壊へと向かっていく。
ホリーに秘められた驚くべき事実とは?というのが本筋となるストーリー。
原題である「You Get Me」は、日本語で「わかってるね」という意味があり、そこにはタイラーとホリーがお互いを理解しあっているといった描写が劇中の序盤で描かれ、それが後に災難をもたらすといった部分と、ホリーからの単純な脅し文句が込められているようにも感じさせる。
中盤で大きく雰囲気が変わる、ティーン・スリラーの良作
アメリカのティーン・ドラマにありがちな喧嘩してからの浮気、その後の主人公たちのドロドロとした人間模様が描かれる、ありきたりな作品かと思っていたら、物語は意外な方向へと舵を取り始める。
本作はあくまでティーンの恋愛や友情に重きを置きながらも、その本質はスリラーなのだ。
ストーカー紛いの女子高生が想いを寄せる男子に蔑ろにされたため、その復讐のために彼の人生を崩壊させようとしていく。
爽やかな景観の広がるロサンゼルスを舞台に活気に溢れた青春模様が映し出される中で、徐々に存在感を増してくる禍々しい雰囲気。
時が流れると同時に全体の空気感が変わっていくのが、また面白い作品だった。
ガールフレンドのアリソンと新たに現れた狂気的なホリーの容姿が酷似していたり、対照的な性格でありながらもどこか相通ずるものがあるなど、そのキャラクター設定なども含めて、近年、数多く製作・公開されているティーン・スリラーの中でも特に良作な印象が強く、映像・ストーリー展開といったクオリティ面に関しても文句なしで、90分ほどの上映時間もあっという間であった。
全米最旬の若手女優ベラ・ソーンが魅せる狂気的で魅力あふれる好演
本作が良質な作品に仕上がっている要因は、そのキャストにもある。
ミステリアスな雰囲気を醸し出し、徐々に本性を現していくホリーを魅力的に演じるのは、全米最旬の若手女優ベラ・ソーン。
アメリカもとい日本でも高い人気を誇るヤング・セレブで、その私生活にまで大変な注目が集まる彼女は、子役としてデビューを飾り、その後2010年よりディズニー・チャンネルで放送開始となったドラマ・シリーズ「シェキラ!」の主演に抜擢され、全米ティーンから絶大な支持を集めるようになる。
同作が2013年に放送終了となるまでディズニー・アイドルとして名を馳せたベラは、その後も女優・歌手として実力を磨いていくことになるが、アイドル的人気を博したスターの宿命とでも言おうか、その脱却に苦戦を強いられてしまう。
そんな彼女がアイドル的イメージからの脱却を図り、いわば悪役に挑戦したのが本作なのだ。
確かにこれまでも様々な役柄に挑戦してきた彼女だが、結果的には上手く脱却できていないイメージが強かった。
だが、この「ラストウィーク・オブ・サマー」で彼女が魅せたその狂気的で妖艶な演技には、もはやアイドル時代の面影はなく、ただひたすらに"女優"としての彼女が存在しているのだ。
私生活でも何かと話題を振りまく彼女だが、画面を通して伝わってくるその類稀なるオーラからは、貫禄すら漂い、大女優の片鱗を見せつけてくる。
彼女の好演が本作のクオリティを何段階も上げているように感じる次第である。
他のキャストに関しても、これからに期待大の顔ぶれなので、ぜひとも注目してもらいたい。 (文=Sunset Boulevard Twitter:https://twitter.com/sunsetblvdmovie)
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