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夢をかなえるゾウ/水野敬也のあらすじと読書感想文

2012年12月31日 竹内みちまろ

夢をかなえるゾウのあらすじ

 「僕」は、名のある大学を出て大企業に就職しましたが、気がついたら会社の歯車としてこき使われていました。3か月前には、「自分を変える」といって、無理矢理に有給をとり、インドへ旅行します。しかし、会社の先輩と2人で飛ぶ鳥を落とす勢いの実業家の誕生日パーティーにもぐり込んだ時は、誰からも相手にされず、存在自体が否定されたと感じました。

 パーティーの翌日、インド旅行で買ってきた象の神様の置物にそっくりの「ガネーシャ」が、六畳一間の「僕」の部屋に現れて、ふわふわと宙に浮いていました。ガネーシャは、「昨日めっちゃ泣いとったで」「号泣しながら言うてたやん、『変わりたい』て」などと、「僕」に語りかけます。「年収が倍になるとか、パーティー行ったら、ちやほやされるとか、そんなんやろ? 余裕やで」とも。「僕」は、このままで終わりたくないし、金持ちにもなりたいし、成功者にもなりたい、そして、自分にしかできないような大きな仕事がしたいと思っていました。「僕」は、ガネーシャから、「自分が変わるために一番簡単な方法」を教わることにしました。

 そんなガネーシャが最初に出した課題は、「靴、みがけや」。「僕」は、「?」となります。改めて玄関に放り捨ててある靴をよく見てみると、毎日の営業やオフィスワークを支えてくれているはずの靴なのに、汚れ放題で、形もでこぼこ。しかし、まだ腑に落ちない「僕」は、「靴みがきなんて、何か意味あるんですか?」と問います。ガネーシャは、イチロー選手が小学生のころから、「神聖な商売道具を粗末に扱うことは考えられない」と、他の選手が帰っても遅くまで残って、グラブを磨いていた事例を話します。また、「僕」の「人の言うことを聞かない」という習性が「成功しないための一番重要な要素」であると、トドメを刺しました。これまでに、変わりたいと何度も決意してきたのに(インド旅行もそう)、変われないないのは、「僕」が「自分の考えにしがみついとる」からであり、「靴みがき(ルビ:そんなこと)して意味あるの?」と考える習性が身についているからだと教えます。

 ガネーシャが課題を出し、「僕」がそれを実践するという、へんてこな共同生活が始まります。「僕」に、少しずつ変化が生まれて来ました。

夢をかなえるゾウの読書感想文

 「夢をかなえるゾウ」は、成功のためのノウハウ本でしたが、本の中にも記されているとおり、紹介されている内容は、すでに世の中に出回っている本に記されている内容であるそうです。しかし、ガネーシャは、エジソン、スティーブ・ジョブズ、カーネル・サンダースらの事例を紹介しながら、この(ノウハウ)本なら自分を変えてくれると「期待」している限り、現実を変えることはできないと断言していました。

 多くの人は「楽」だから、その場で「今日から変わるんだ」と決意しますが、それは「意識を変えよう」としているだけで、また、決定的なのは、人間は「意識を変えることはできない」こと、といいます。その上で、ガネーシャは、例えばテレビを見る時間を減らすためには、テレビを捨ててしまうことがてっとり早いのですが、テレビのコンセントを抜くなどという具体的な行動を取る必要があることを「僕」に理解させ、「意識」ではなく、(テレビを見にくくするというように)「環境」を変えなければならないことを「僕」に教えていました。読者としても、ああー、そうなんだ! と納得させられることばかりで、いくつも発見がありました。

 ガネーシャが出す課題は、「靴をみがく」にはじまり、「会った人を笑わせる」「トイレ掃除をする」「まっすぐ帰宅する」など、「僕」が「?」となるものばかりでした。ただ、ガネーシャが、人間が持つ意識や習性の特徴や、思考回路や、発想や、行動形態らを紹介しながら、なぜそうすることが必要なのかを解説してくれますので、心理学的な面白みもありました。また、ガネーシャが、「もし、『みんな』と『自分』に境界線引くチャンスがあるとしたら、それは『今』以外ないで」「自分の『これや!』て思える仕事見つけるまで、もう、他のもんかなぐり捨ててでも、探し続けなあかんねん」などと熱く語る場面は、引き込まれました。


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