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映画「レ・ミゼラブル」のあらすじ

2013年3月3日 竹内みちまろ

映画「レ・ミゼラブル」

 映画『レ・ミゼラブル』(ヴィクトル・ユゴー原作=1862年/トム・フーパー監督/2012=イギリス/158分/ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウほか)を見て来ました。ロンドンでの1985年の初演以来ロングランを記録し続け、世界中で上演されているキャメロン・マッキントッシュさんの舞台を元にした作品で、貧しい娘・ファンテーヌを演じたアン・ハサウェイさんが、第85回アカデミー助演女優賞を受賞。

 『レ・ミゼラブル』は、革命の嵐が吹き荒れる19世紀のフランスが舞台の重厚な人間ドラマです。映画では、せりふは、舞台形式で流れ、イメージは、華やかなミュージカルというよりは、重厚な人間ドラマの雰囲気。オルガンやヴァイオリンらの演奏を背景に、せりふや、ソロや、合掌が繰り返されるバッハの「マタイ受難曲」に近いかもしれません。

 「レ・ミゼラブルのあらすじ」感想をメモし、「感想とフランス革命の時代背景」をまとめておきたいと思います。

レ・ミゼラブルのあらすじ

 フランス革命後、王政が復活した1815年、飢えた妹の子どものためにパンを1つ盗み、20年の刑に受けていたジャン・バルジャンは、大船の引き揚げ作業の帰り、法の番人を自称する刑吏のジャベールから、三色旗が付けられた折れたマストを取って来いと命じられます。怪力でマストを持ち上げたバルジャンは、19年目にして、仮釈放となりました。しかし、仕事を求めても「身分証を見せろ」といわれます。バルジャンの身分証には「危険人物」の烙印が押されていました。

 バルジャンが教会の前で倒れていると、司祭から声を掛けられ、中へ案内されます。バルジャンは客人として迎えられ、暖かい食事と、ベッドを与えられました。しかし、夜、バルジャンは、司祭が寝ているすきに、教会の銀の食器を盗み、逃げます。逮捕されたバルジャンが、証拠の食器とともに、司祭の前に連れてこられました。司祭はバルジャンを兄弟と呼び、食器は与えたものだと警官に告げます。司祭は、これも持っていきなさいと、銀の蜀台をバルジャンへ与えました。司祭は、「正しい人になりなさい」と告げます。生きる術を知らなかったバルジャンは、恥を知り、生まれ変わることを決意。身分証を破り捨て、仮釈放に伴う毎月の出頭(身分証に確認印を押す)もやめました。

 1823年、バルジャンは、貧者の味方と尊敬される市長になっていました。そのバルジャンのもとに、新たに署長に就任したジャベールが着任のあいさつに来ます。ジャベールは、以前どこかでお会いしましたか? と聞きますが、バルジャンは、君のような男は一度会ったら忘れない(会ったことはない)、と答えます。外の通りで、馬車が横転する事件が起こり、駆け付けたバルジャンは、怪力で馬車を持ち上げ、男を助けます。その姿を、ジャベールが見つめていました。

 バルジャンの作業所で働く貧しい娘・ファンテーヌは、男に捨てられ、幼い娘コゼットを宿屋の夫婦に預けていました。宿屋からの「金を送れ」という手紙を同僚の女たちに取り上げられ、さわぎになります。バルジャンは、穏便に収めるよう工場長に命じて立ち去りました。自分たちまで職を失うことを恐れた作業員の女性たちがファンテーヌの解雇を要求し、工場長はファンテーヌをたたき出しました。

 ファンテーヌは、髪の毛を10フランで売り、奥歯を20フランで売り、娼婦に身を落とします。娼婦街で、ある男がファンテーヌをからかい、ファンテーヌが男を突き飛ばしました。ジャベールの警官隊が通りかかり、男はファンテーヌに襲われ、強奪されそうになったと主張。ジャベールはファンテーヌを逮捕しようとしますが、バルジャンがかばいます。しかし、ファンテーヌは、お前が私を解雇したと、バルジャンへ唾をはきかけました。解雇されたことを知らなかったバルジャンは驚き、この娘は無実だと、ファンテーヌを抱き上げ病院へ運びました。

 ジャベールがバルジャンのもとを訪れます。ジャベールは、バルジャンをパリへ告発していました。ただ、パリからは、仮釈放中に逃亡したバルジャンが逮捕されたことを伝えてきたのでした。ジャベールは、バルジャンに、貴方を疑い、名誉を傷つけたとわびます。バルジャンは、ジャベールへ、君は職務に忠実だっただけなので職に留まりなさいと伝えます。そして、逮捕されたバルジャンが人違いだと訴えていることを知ります。

 ジャベールが帰ったあと、無実の他人が身代わりになろうとしていると苦悶し、バルジャンは、私は誰なのだと自問します。バルジャンは逮捕された他人が裁かれている法廷に乗り込み、「私が24601だ」(24601はバルジャンの囚人番号)と名乗ります。その場は、市長は疲れておられるので別室へ運べ、とおさまりました。

 バルジャンが病院を訪れます。ファンテーヌが死の床に就いていました。バルジャンは、コゼットの幻を見る

ファンテーヌに、コゼットは自分が保護すると約束しました。ファンテーヌは、息を引き取ります。そこに、ジャベールが登場しました。バルジャンは、3日後に必ず戻ると、コゼットを助けるための猶予を頼みます。ジャベールは聞き入れずサーベルを抜きました。バルジャンは、窓から川に飛び込み、逃げました。

 バルジャンはすぐに宿屋を訪れて、使用人の扱いを受けていた幼いコゼットを、引き取ります。入れ違いに、ジャベールがコゼットを探しに、宿に来ました。バルジャンは馬車の中で、傍らにコゼットを乗せ、「見えぬ何かが始まったのだろう」「もう1人ではない。過去は明かせぬ」と、コゼットを育てる決意をしました。パリの北門で、ジャベールが検問をはっていることを知ると、馬車からコゼットを連れて逃げ出し、路地に逃げ込みます。追われますが、かつて馬車の下敷きになっていた男に会い、男の手引きで、逃げ延びました。

 1832年、パリの貧民街は、失業者の不満であふれていました。バルジャンは、美しい娘に成長したコゼットを連れ、貧民街で施しをしていました。バルジャンとコゼットは、コゼットを預かっていた宿屋夫婦のすりの一味に狙われ、さわぎになります。ジャベールの警官隊が駆け付け、バルジャンは姿を消しました。ジャベールは、「宿敵が舞い戻った」と笑みを浮かべます。

 パリでは、革命の熱気があがっていました。特権階級の青年・マリウスは、家を飛び出し、貧民街をねぐらとして、革命運動に身を投じていました。宿屋夫婦の娘で、かつてコゼットと同じ家に暮らしていた娘・エポニーヌは、マリウスに恋をしています。ただ、マリウスはエポニーヌの気持ちに気づいていません。すり騒動のとき、コゼットを見かけていたマリウスは、コゼットへの恋に落ちていました。コゼットも、マリウスにひと目ぼれをしていました。

 ジャベールに見つかったことを悟ったバルジャンは、その家をすぐに引き払い、明日は別の場所に泊まり、その翌日に英国へ出発するとコゼットに告げます。コゼットは、バルジャンに、なぜパパはいつも独りなの/私を引き取る前のパパのことを話して/これは私の人生なの、もう子どもじゃないの/過去に何があったの、と詰め寄りますが、バルジャンは口を閉ざしたまま。

 マリウスは、エポニーヌにコゼットを探してくれと頼みます。この街でわからないことはないというエポニーヌの手引きで、マリウスは、バルジャンの家の門の前に行きます。中から出てきたコゼットと見つめ合い、愛の言葉を交わします。そこに宿屋夫婦の一味が、バルジャンの家へ強盗へ入るためにやってきました。エポニーヌが悲鳴をあげてさわぎを起こし、バルジャンはコゼットを連れて、すぐに家を出ます。混乱の中、コゼットは、マリウスへの手紙を門に残し、エポニーヌが手紙を取りました。

 民衆に慕われていた将軍が死にました。葬列の日、学生らを中心とする運動家たちは、「市民を信じて、立ちあがろう」と決意します。マリウスがコゼットの家を訪れると、もぬけのからでした。マリウスは、コゼットを探すべきか、留まって革命に参加すべきか迷います。マリウスは「俺の居場所はここだ」と、革命を選びます。

 夜が明けました。葬列がしめやかに行進します。沿道の運動家たちの中から静かな歌声が起ります。運動家たちが、柩を奪いますが、騎馬隊が駆け付けます。運動家たちは、バリケードの中へ立て籠もりました。マリウスは、コゼットへ、「革命に参加する、生きていたらまた会いたい、僕のために祈ってほしい、僕も君のために祈る」と手紙を書き、貧民の少年に託しました。少年は宿を訪れ、バルジャンに手紙を渡しました。

 「青二才の学生ども」と憤慨していたジャベールは、志願兵を名乗って、バリケードの中に入り、今夜は襲ってこない/飢えさせてから明日の昼に攻撃してくる、とウソの情報を流します。しかし、少年がジャベールの素性を知っており、ジャベールは縛り上げられてしまいます。

 夜のうちに攻撃が始まります。軍隊がバリケードを上り始めました。油のタルと松明を抱えたマリウスが、「引かなければ火をつける」「死は覚悟している」と言い放ち、軍隊を押し返しました。被弾して倒れたエポニーヌは、マリウスへ「ごめんね」と言って、渡していなかった手紙を差し出します。エポニーヌは、「やっと渡せた」と笑顔を見せ、息を引き取ります。

 バルジャンが、マリウスを助けるために、志願兵を名乗ってやってきました。バルジャンは、縛り上げられていたジャベールを見て、彼のことは任せてほしいと運動家たちへ頼みます。路地裏にジャベールを連れ出したバルジャンは、縛りを解き、殺したと伝えるために空砲を一発撃って、ジャベールを逃がしました。

 翌朝、カノン砲で、総攻撃が始まります。バリケードはなす術もなく粉砕されました。逃げまどう学生運動家たちが「助けてくれ」と戸をたたいても、沿道の市民は、戸を閉ざしたまま。砦は落ち、学生たちは次々に倒れていきます。ジャベールが視察に訪れると、学生たちの死体が並べられていました。ジャベールは、自分の勲章を外し、横たわる少年の胸に飾ります。バルジャンの死体はなく、下水道の入り口が破られ、中から、もの音がしました。

 バルジャンは、「この地上に自由を」を叫んで撃たれたマリウスを担いで、下水道を伝って逃げていました。下水道の通路から地下水道に落ちた際、そこで宿屋夫婦が死体から金目のものを盗んでいましたが、宿屋が落ちてきたマリウスの指から指輪を盗みます。バルジャンは、宿屋をぶん殴り、出口はどっちだと糺し、気を失ったままのマリウスを担いで、地上への出口に着きました。そこに、ジャベールが待っていました。ジャベールは、動けば撃つ、と警告します。しかし、バルジャンはマリウスを担いだまま、ジャベールの横を通り過ぎます。「俺とやつと法と、どれが正しいのか」、苦悩したジャベールは、水路に自らの身を投げました。

 革命の夢に破れたマリウスは、家に帰ります。コゼットが待っており、マリウスの祖父も温かく見守ります。コゼットとの結婚を承認してくれたお礼を言うため、バルジャンを訪れたマリウスに、バルジャンは、君にだけ話しておくことがあると、コゼットと出会う前のことを告げます。マリウスは、顔つきが変わります。私は誰だ?と苦悩するバルジャンに、あなたはジャン・バルジャンだ、と言い放ち、バルジャンの前から去りました。

 結婚式の日、宿屋夫婦がすりを働くため、会場に忍び込みます。マリウスが見つけ、たたき出そうとしますが、宿屋が革命の日に死体からこいつをかすめとったと見せびらかした指輪がマリウスのものでした。マリウスは、バルジャンに助けられたことを知ります。自分の仕打ちを悔いたマリウスは、ウエディングドレスのコゼットを連れ出し、修道院で死を迎えようとしていたバルジャンを訪れ、わびます。バルジャンは、コゼットとマリウスを見つめ、ファンテーヌの幻に導かれ、天に召されました。

 パリに、革命の歌が響きます。


→ 映画「レ・ミゼラブル」の感想と時代背景(フランス革命)


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