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書評『ポンチョに夜明けの風はらませて』(早見和真)あらすじ&読書感想文、映画化への期待も

2017年5月1日

 2017年10月に映画公開が決まっている『ポンチョに夜明けの風はらませて』。本映画では、若手の実力派俳優が多くキャスティングされており、また、上映する映画館増加のためのクラウドファンディングも行っているため話題を呼んでいるようだ。

 早見和真さん原作の『ポンチョに夜明けの風はらませて』を実際に読んでみたので、早速あらすじと感想、そして映画についても紹介していこうと思う。

ポンチョに夜明けの風はらませてのあらすじ

 高校生活3年間、なにか凄いことをしたい…!と思いながらも、なんとなく日々を過ごしてしまった又八、ジン、ジャンボ、ネズミ。卒業を間近に控え焦りを感じた彼らは、“高校デビュー”のラストチャンスに卒業式乗っ取りライブを企む。

 卒業式を明後日に控えた夜、又八は、前日まで倉敷で受験をしているジンを車で迎えに行くと言い出した。ジャンボは言い出したら聞かない又八に呆れつつも、ジャンボの父親のセルシオを拝借し、二人のジンを迎えに行く旅が始まる。卒業式まで残り39時間。東京から倉敷まで。果たして卒業式に間に合い、無事にライブは成功するのだろうか?

 道中で癖のある人々と出会い少しだけ成長しながら、それぞれの旅の目的を見つけ、自分の人生について考えていく。そんな人間臭く青臭い、青春ロードムービー。

ポンチョに夜明けの風はらませての登場人物

 “青春映画”ということで、今後の映画界を担う期待の若手俳優たちの活躍が本作の見どころと言えるだろう。登場人物のキャラクターと、その配役は以下の通りである。

又八/太賀

 お調子者で言い出したら聞かない性格でのため、他の3人をよく振り回している。物心つく前に父親は蒸発し、母親はスナック(ザ・ゴールデン・アイランド)で働いる。そのため普段は天ぷら屋「八兵衛」に入りびたっており、店主であるジャンボの父親を、自分の父親のように慕っている。高校デビューし“何者”かになろうとして試行錯誤するも上手くいかず、中途半端な3年間の高校生活に焦りを抱く。卒業後は美容師になるための専門学校に通う予定。

 演じるのは、2006年に俳優デビューして以来数多くのドラマや映画に出演している太賀さん。最近では『ゆとりですかなにか』の山岸ひろむ役で注目を浴び、また『走れ、絶望に追いつかれない速さで』では主演を務めた。公式サイトでは「明日の事など考えずに今を全力で生きる、又八は僕にとってあまりにも青く、馬鹿で、眩しい役でした。」とコメントしており、自身とは違うキャラクターの又八をどのように演じるのか、太賀さんの役作りにも注目したい。

ジャンボ/矢本悠馬

 天ぷら屋「八兵衛」の跡取り息子。体重は優に100sを超えているが、わりと俊敏。とても優しく友達思いで、又八の無茶な頼みをつい聞いて甘やかしてしまうところがある。その柔らかく家庭的な雰囲気からか意外と女子にはモテており、4人の中で唯一高校時代に彼女がいたことがある。卒業後は「八兵衛」で修業をする。

 演じるのは『ブスと野獣』で主演を務め、最近では『ちはやふる』や大河ドラマ『おんな城主 直虎』に出演し、またベストセラー小説『君の膵臓をたべたい』の映画にも出演予定の矢本悠馬さん。柔らかい雰囲気がジャンボ役にとてもぴったりである。公式サイトでは「今までやってきた作品の中で、この映画が1番、撮影時間の早さを感じる現場でした。」とコメントしており、まさに現場では青春を満喫していたようで作品が楽しみだ。

ジン/中村蒼

 イケメン。父親は学業第一で厳しく、不良の兄とは不仲で家庭の雰囲気は最悪。そのせいか、周りより大人びた雰囲気がある。自分が不良にならずに済んだのは又八とジャンボのおかげだと考えており、二人をとても大切に思っている。また自分の両親と不仲のため、ジャンボの父親や又八の母親に対して家族のような親しみを抱いて接している。第一志望の早稲田大学に落ちてしまい、卒業式の直前に岡山の倉敷にある大学を受験しに行く。

 演じるのは、『恋空』で映画初出演を果たし、本作と同じく早見和真さん原作の映画『ひゃくはち』では主演を務めたことのある中村蒼さん。公式サイトでは、自身の青春を振り返りながら「これくらいバカになれたらよかったのになぁ」とコメントしており、エンターテインメント性に富んだ映画であることが伺えた。

ネズミ/染谷将太

 他の3人とは異なり、高校に入ってからグループに加わった。又八とキャラがかぶっていることを気にしているようだが、又八とは違い要領が良く上手くこなすタイプで、大学は推薦を勝ち取っている。岡山までの旅に同伴しそびれ、東京で留守番をしているため出番は少なめ。

 演じるのは、数々のドラマや映画に出演し主役も多く務めてきた、今や名俳優の染谷将太さん。何故ネズミ役に染谷さん、、、?と思いながら終盤の方まで読み進めたが、最後まで読み終わってようやくキャスティングの意図を理解した。が、これについては感想で触れたいと思う。

ポンチョに夜明けの風はらませての読書感想文

 自分は何者でもない、とか。日々がつまらない、とか。そんなことに焦りを感じた経験が誰しもあるだろう。そんな私たちに等身大で向き合い、再び青春を楽しませてくれるような小説だった。また、登場人物それぞれの視点から語られた、自身の胸の内や、他の登場人物への思いは、読者からキャラクターへ親近感を抱きやすい構成となっていたと思う。登場人物たちはそれぞれが悩みを抱えていたものの、“男子高校生特有の”とでも言おうか、彼らが集まると、家庭の事情とか恋の悩みとか、跳ね飛ばしてしまうくらい、エネルギッシュで面白く、爽快な気持ちにしてくれる。

 この作品のテーマについて考えてみたとき、最終章のタイトルである「ねぇ、この物語の主人公は俺なんだって知ってた?」が思いあたった。これはネズミのセリフであるが、この章までネズミはほとんど出番がない。ネズミ役が染谷さん、ということに対しての疑問が膨れ上がったところでの最終章であった。最終章までの間、他の3人は青春し、おそらく奇跡と言えるような体験をする。そして最後に、置いてけぼりになっているネズミが自分語りする番がまわってくる。平凡だけど誰もが抱えているような悩みを…。

 決して最後の最後まで読者を置いてけぼりにはしない優しさが、この小説にはあった。ネズミを自分に重ねて、勇気と未来への期待を胸に、私は『ポンチョに夜明けの風はらませて』を読み終えた。(ミーナ)


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