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二都物語/ディケンズのあらすじと読書感想文

2013年1月3日 竹内みちまろ

 「二都物語」(原題:A Tale of Two Cities/ディケンズ/中野好夫訳)は、フランス革命が舞台です。階級社会を否定した青年は、爵位を捨てました。ロンドンに渡って平和に暮らしていました。「二都物語」は、そんな青年が、革命が勃発したパリに戻る物語でした。かつての召使から助命を請う手紙を受け取った青年は、故国に向かいました。「市民」として帰国したつもりだった青年は、パリで「貴族」として死刑を宣告されました。

 物語の基本軸は、ロンドンからパリに向かい、そこで逮捕されるという青年の行動です。青年の行動の合間をぬって、フランス貴族の横暴さや、貴族に対して怒りを積み上げていく民衆の姿が多くの人物を登場させた具体的なエピソードの中で語られています。

 「二都物語」のクライマックスは、青年を裁く法廷です。バスティーユの牢獄から発見されて、何年もの間ずっと秘密にされてきた手紙が読まれます。手紙によって語られたのは、青年自身も知らなかった物語です。青年の家名がいかに罪深いものであるかを物語っていました。それは、今は青年の義父で、かつてはバスティーユの囚人であった老人が監獄の中で書いた手紙でした。手紙の中では、青年の父や叔父であった先代の侯爵の暴挙が糾弾されています。

 「二都物語」は、脇役も含めて多くの人物が登場する物語でした。たとえば、革命を起こした民衆の側の人物で、貴族に対して激しい憎悪を燃やす女性が登場します。女性は貴族の横暴さを伝えるエピソードの中に登場します。パリでは青年を執拗に弾劾します。そんな女性は、実は、法廷で読まれた手紙によって明かされた侯爵による民衆への迫害の犠牲者でした。手紙は、老人がバスティーユに投獄された経緯を物語っていました。今では青年の義父となっている老人は、青年の父親である侯爵の手で不当に18年間も投獄されていました。娘婿と成った青年を信頼していた老人は、そのことをずっと黙っていたのでした。

 手紙によって語られた物語を起点にして、物語に登場していた多くの人物たちのドラマが、一つに集積します。登場人物たちは、手紙によって明かされた侯爵家の過去の事件の関係者でした。それぞれが見えない糸によって青年とつながっていたのでした。青年は、自分が信じる「思想」ではなくて、自分の血の中に流れている「宿命」を感じました。

 爵位を捨てた青年の行動を基本軸として、フランス貴族の横暴さを紹介するエピソードが、実は、青年が生まれた侯爵家を舞台とした物語であり、手紙によって明かされた侯爵家を弾劾する事件の関係者が青年のまわりに集っていたことが語られて、「二都物語」は終末に向かいます。そして、「二都物語」のラストシーンでは、登場人物たちがそれぞれの持ち味を出した行動を取ります。

 青年に加えて脇役クラスの登場人物にも人生のドラマを持たせて、暗雲が立ち込める現実世界を生きる生の人間として描いたことが、革命下のフランスの姿をいっそう浮き彫りにしているのだと思いました。


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