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100回泣くこと/中村航のあらすじと読書感想文

2013年3月11日 竹内みちまろ

100回泣くことのあらすじ

 大学生のときにから飼っている犬のブックが死にそうだという電話を実家の母親からもらった「僕」は、交際して3年になる同じ年の彼女との電話で「バイクで帰ってあげなよ」と言われました。ブックはエンジンの音を聞くと大喜びします。何年も乗らないで置いたままにしているバイクを整備することになり、彼女と2人で作業をしていました。「僕」は、「……結婚しようか」と彼女に告げ、「うん」「結婚しよう」と返事をもらいます。

 実家に帰ると、あれだけ好きだったエンジン音も聞こえないほどブックは弱っていました。実家から戻り、彼女にそのことを告げると、彼女は、「練習が必要だと思うの」と話し始めました。まず一週間、結婚したつもりで生活してみて、うまくいったら一年間、暮らしてみる。3か月に一度くらい反省会を開くことなどを話し合いました。彼女との生活が始まります。静かな時間が流れていきます。しかし、彼女が体調不良を訴え、ついには、入院して検査をすることになりました。

100回泣くことの読書感想文

 「100回泣くこと」は、静かな小説で、「風立ちぬ」を思い出します。描かれていることは、ほんとうに、静かな時間で、彼女の闘病生活も淡々と描かれ、冷静さを失った「僕」が職場で怒りを貯める場面すらも、曇りガラス越しに見る、ぼんやりとした風景のようでした。

 印象に残っている場面があります。じゃんけんの場面でした。いっしょに暮らし始め、月火水は彼女が夕食を作り、木金は「僕」が作ることになります。そして、食後の洗い物は、じゃんけん。「僕」は何気ない風を装って、全力で勝ちに行き、じゃんけんを確率だと思っているという彼女に、3回に2回は勝ちました。彼女は、おかしいなと首をひねっていましたが、ある時、テーブルにサイコロが2つ置いてあり、それ以来、「僕」は、2分の1の確率で、片づけをするようになりました。全力で勝ちにいって喜ぶ「僕」も、おかしいなと首をひねったあとにサイコロを用意する彼女も、裏表がなく、そんな2人が積み重ねていく時間が、ほほえましくなりました。

 大切な人と共有する時間は、たとえ静かに流れていても、かけがえのないものなのだと思いました。


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