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ぼくらの七日間戦争/宗田理のあらすじと読書感想文

2012年8月25日 竹内みちまろ

 『ぼくらの七日間戦争』(宗田理)を読んでみました。映画化もされた知名な作品ですが、調べたら発行は1985年(昭和60年)とのこと。「管理教育」「非行」「不良」「スケ番」「体罰教師」など、(根底にある問題や背景はさておくとしても)時代というものを反映した作品だと思いました。あらすじと読書感想文をまとめておきたいと思います。

 中学校の一学期の終業式の日、家族旅行に出発する予定だった1年2組の菊地英治が家に戻らず、心配した母親が学校まで行き、プールで練習をしていた同じクラスの中山ひとみに尋ねると、英治は1時間以上も前に帰ったといいます。結局、体育教師の体罰で体を悪くし学校を休んでいた谷本聡を除き、22人中21人の男子生徒がその日、家に帰りませんでした。女子は全員、家に帰っていました。谷本聡を含む男子生徒たちは、「おれたちの解放区」を作るため、荒川の河川敷にある倒産した荒川工機の建物に立てこもり、半径100メートルしか届かないミニFM放送で、「解放区放送」を始めました。放送は、谷本が指揮し、計画に加わっていたひとみら数名の女子生徒たちによって、さらに広範囲に広げられました。

 「おれたちの解放区」の言い出しっぺは、相原徹(とおる)でした。6月の始め、英治に「おれたちの解放区をつくるんだけど、お前も参加しねえか」ともちかけました。「お前、セン公とか親とか、おとなたちのやることに満足しているのか? 言いたいことはねえのか?」という漠然としたものでしたが、「(誘うのは)一年二組の男子全員さ」「ヤバイさ。だからおもしろいんだ」などと言い合っているうちに、全員が参加することになり、「男子だけで何かしようとしてるでしょう? おしえなさいよ」とかぎつけてきた数名の女子を加え、食料を持ち込んだり、FM放送の発信器を準備したりしました。生徒たちの親は、子どもたちには、勉強して、いい大学に入って、いい会社に入って、「幸せ」になってほしいと願っている人もいました。家庭を顧みない親や、娘には口うるさいくせに浮気をしている親や、母親を殴る父親がいました。校長や警察署長と組んで入札の見返りに市長選挙の票のとりまとめを建設会社たちに約束させる親も。また、校長は、子どもは人間ではなく動物だと思って「しつけ」をしなければならないといい、体育教師は、ぞうきんを口にくわえさせたり、女子生徒の乳首をつねったりする「体罰」を繰り返していました。

 印象に残っている場面があります。全学連の学生運動に参加し安田講堂に立てこもった経験がある相原徹の両親が、「もちろん、連中は何もわからずに行動しているんだろう。意識下の問題さ」「しかし、いまの大学生を見てみろよ。もう権力に反抗するエネルギーなんて、これっぽっちもありゃしないぜ。高校生はどうだ? これは大学の予備校になりさがっている。中学生だって、三年生になれば教師の言いなりだ」「彼らをつき動かしているのは思想じゃない。生存の本能さ」などと語り合う場面でした。両親の心には、安田講堂に立てこもったときの興奮が蘇り、同時に、むなしさも感じていました。

 ストーリーは、解放区に参加するはずだった柿沼が、サラ金地獄に落ちていたサラリーマンから身代金目的で誘拐されてしまったり、その柿沼を秘密の通路(荒川工機の敷地にあるマンホールから地下水道に入り、児童公園に出る)を使って抜け出した男子生徒たちが救出したり、瀬川卓蔵という戦争経験のある70歳の浮浪者が解放区で生徒たちに知恵を授けたり、芸能レポーターがやってきてマスコミで大々的に報道されたり、生徒たちが解放区放送とメガホンを使って校長や、教師や、親たちの悪巧みをばらしたりすることで進みます。最後の夜、ちょうど荒川花火大会の日でしたが、解放区の建物の屋上から、メッセージを込めた花火をどでかく打ち上げ、女生徒たちが狂喜乱舞。翌日、学校からの要請を受け入れた警察がブルドーザーを使って解放区を破壊しますが、「おれたちは負けて逃げるんじゃない。やるだけのことをやったから、ここから転進するんだ」と、女子全員が待っている児童公園へ向かいました。

 『ぼくらの七日間戦争』は、読み終えて、いろいろなことを考えました。中学一年生たちが「生存の本能」に突き動かされて行動を起こし、「やるだけのことをやった」あと、それぞれが少しずつ変化していた様子が心に残りました。中学一年生とはいえ、行動を起こしたあとの少年たちの心意気と言動は、なかなかのものでした。また、トランシーバーで連絡を取り合ったり、手紙を投げ込んだりするなどして女子たちと協力する様子も、よかったです。「やるだけのことをやった」からこそのすがすがしさだと思いました。


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