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映画『アンナ・カレーニナ』キーラ・ナイトレイのあらすじと感想

2013年4月5日 竹内みちまろ

 映画『アンナ・カレーニナ』(ジョー・ライト監督/2012=イギリス)を見ました。アンナをキーラ・ナイトレイが、ヴロンスキーをアーロン・テイラー=ジョンソンが、アンナの夫のカレーニンをジュード・ロウが演じています。あらすじと感想をメモしておきたいと思います。

アンナ・カレーニナのあらすじ

 帝政末期のロシア。大臣を務めるカレーニンの美しい妻アンナは、一人息子を愛していましたが、社交は苦手で、夫の勧めにも関わらず、外に出ることはあまりありませんでした。

 アンナの実兄が浮気をします。アンナは、実兄の身重の妻をなぐさめるために、モスクワへ向かいます。汽車の中で、若きイケメン将校ヴロンスキーを見かけ、恋に落ちました。一方、青年領主リョービンは、アンナの兄の妻の妹のキティへ、キティの家の意向も踏んで、プロポーズします。しかし、ヴロンスキーにぞっこんだったキティは断ります。ただ、ヴロンスキーはキティをあっさり捨てて、アンナとの恋に走りました。

 アンナとヴロンスキーは離れられなくなり、やがて、アンナはヴロンスキーの子どもを産みます。ヴロンスキーの家では、ヴロンスキーを跡取り息子のいない貴族の令嬢と結婚させようと模索し、実直で国のために尽くすカレーニンに人望があることも手伝って、アンナは一人、堕落した女として社交界からも爪はじきにされます。

 アンナは、酒とモルヒネに依存するようになり、ヴロンスキーと言い争いを繰り返すようになります。キティの元を訪れたリョービンは、プロポーズした時と気持ちが変わらないことを確認し、2人は結婚しました。

アンナ・カレーニナの感想

 今回の映画『アンナ・カレーニナ』は、冒頭で、オペラ会場かと思わせるような大舞台が出てきて、幕があがり、静止していた登場人物が動き出すという演出でした。作中を通し、登場人物たちは、最初から最後まで劇中劇の世界の住人で、セットの舞台裏まで歩いてしまいます。ラストも、大舞台の遠景で終わりました。『アンナ・カレーニナ』は何度も映画化されており、前に見た、ソフィー・マルソー版の映画はリアルな実写に徹していました。ただ、『アンナ・カレーニナ』に限らず、『戦争と平和』でも、『復活』でもそうですが、長編を2時間程度の作品にまとめてしまうと、どうしても、原作を読んでいない鑑賞者をおいてけぼりにしてしまう構成になります。ソ連やBBCの大長編の映像版は見ていないのですが、今回は、アンナの美しさよりも、作品自体が劇中劇という構成が印象的でした。

 今回見たキーラ・ナイトレイ版『アンナ・カレーニナ』で一番印象に残ったのは、リョービンとキティが愛を確認し合う場面でした。夕食にリョービンがやってくると、キティはそわそわし始めます。リョービンもどこか、居心地が悪そうですが、食後、2人は、小さなテーブルで向かい合います。子どもに言葉を教えるためのアルファベットの文字が書かれた積み木で、言葉を並べながら、プロポーズを断ったときのことや、プロポーズの気持ちに変わりがないことなどを確認し合います。いったんはプロポーズして見事に断った2人なので、言葉にしてはなかなか言いにくいことですし、子どもが使うおもちゃの積み木で、大の大人が2人で、じれったいとも思えるほど、言葉を並べていく様は、はたから見れば滑稽に映るのかもしれませんが、積み木を並べながら、2人の指先が触れ合う場面はロマンティックでした。リョービンが並べた「I」「L」「Y」(=I LOVE YOU)の言葉を見たときのキティの嬉しそうな顔もきれでした。もともとは心優しいキティでしたので、リョービンと幸せな家庭を築いていくことが暗示されます。

 また、カレーニンとヴロンスキーが手を握り合う場面も印象的でした。決して、双方の意に介したことではないのですが、瀕死のアンナがベッドに横たわり、カレーニンがアンナを手を取ります。アンナが、カレーニンへ、離れた場所で見守っていたヴロンスキーを呼んでくれるように頼み、ヴロンスキーがベッドの反対側に来ます。アンナが、カレーニンに頼み、カレーニンがヴロンスキーの手を取りました。カレーニンは、ヴロンスキーに、「今日は帰りたまえ、妻が望んだ時は必ず連絡する」とヴロンスキーに告げます。ヴロンスキーはカレーニンの胸で泣き崩れました。ヴロンスキーは、カレーニンから、アンナを「寝取った」わけですが、決して、カレーニンを嘲笑するようなことはありませんでした。また、離婚に応じないカレーニンを批判するようなこともありませんでした(カレーニンンが離婚に応じないとヴロンスキーとアンナは結婚できない)。カレーニンは、息子からもなつかれず、友人は宗教やオカルトに入れ込んでいる堅物の貴婦人しかいませんでした。真面目で実直な男としては尊敬を集めていましたが、決して、男として尊敬されているわけではないようです。ただ、それでも、制度的に男が守られている(そのぶんアンナ一人が悪者になる)ということもあり、ヴロンスキーは、カレーニンに恥をかかせることようなことはしませんでした。ヴロンスキー自身も、恥を知る男という気がしました。

 なんだが、アンナ以外の登場人物のことばかりを書いてしまいましたが、アンナとヴロンスキーが舞踏会でダンスを踊る場面は、うっとりするほど綺麗でした。


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