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ピーター・パンとウェンディのあらすじと読書感想文

2016年1月28日 竹内みちまろ

ピーター・パンとウェンディ(J.M.バリ/芹生一訳)のあらすじ

 イギリスに、何でもかんでも近所と同じにしておかなければ気が済まない会社勤めのダーリング氏と、万事をきちんとしておくことが好きなダーリング夫人が住んでいた。2人の子どもは、ウェンディという女の子と、ジョンとマイクルという男の子。

 ダーリング夫人は、ウェンディがときどき分からないことを言うことに気付き、「でも、ピーターってだれなの?」と尋ねた。小さなウェンディは、「だから、ピーター・パンじゃないのお母さん」と答えた。

 ある日、子ども部屋で縫物をしていたダーリング夫人はうとうとして、奇妙な男の子の夢を見た。ダーリング夫人が夢を見ている間に窓が開き、小さな男の子、ピーター・パンが降り立った。

 ピーターは、子どもの握りこぶしほどの女の子の妖精、ティンカ・ベルを連れていた。ダーリング夫人が目を覚ますと、ピーターが部屋中を飛び回っており、部屋の中にいたのが大人だと気が付くと、ダーリング夫人に、歯をきりきりして見せた。

 ダーリング夫人は悲鳴を上げた。ケンジント公園で拾ったニューファウンドランド犬のナナがピーターに飛びかかった。ピーターは窓から逃げて行ったが、ナナがピーターの影をくわえていた。ダーリング夫人は、ピーターの影を、くるくる巻いて引き出しにしまった

 ダーリング夫妻が二十七号の家に招待されて出かけて行った夜、星たちが、ピーターに、「もういいよお。ピーター」と声を掛けた。ピーターとティンカ・ベルはウェンディたちの部屋に降り立った。

 ウェンディが年を尋ねると、ピーターは「わかんないや」、「生まれた日に逃げだしちゃったんだ」、「お父さんとお母さんが、ぼくが大人になったらなににしようかって話しているのを、聞いちまったからさ」、「ぼくは大人なんかに、ぜったいなりたくない。いつまでも小さな子どものままで楽しいことをしてたいんだ」などと告げた。

 ピーターは、子ども部屋の窓に行くのは、お話が聞きたいからだといい、「迷子の男の子たちだって、みんな知らないし」と付け加えた。

 ピーターは、ウェンディに、ネヴァーランドに来て、迷子の男の子にお話を聞かせてほしいと頼んだ。ウェンディは、母親が心配するし、何よりも飛べないので、行けないと断った。しかし、「むこうに行けば人魚もいる」などとピーターから聞くうちに心を奪われた。眠っていたジョンとマイクルを起こし、ウェンディ、ジョン、マイクルの3人は、ピーターとティンカ・ベルのあとに続いて、窓から夜空に飛び立った。

 ウェンディたちは、飛び続けた。飛びながら、たくさんの夜を過ごし、ネヴァーランドの近くにたどり着いた。しかし、海賊が大砲を撃ち、ピーターは爆風で海のかなたに吹き飛ばされ、ウェンディとティンカ・ベルは、空高く舞い上った。

 ウェンディが迷子の男の子に弓矢で打ち落とされるなどしたが、ウェンディ、ジョン、マイクルの3人は、迷子の男の子たちの元に辿り着くことができた。

 ピーターは、6人の迷子の男の子たちに、「ぼくはみんなのために、とうとうお母さんをつれてきた」と告げた。みんなでウェンディのためにかわいらしい家を建てた。

 ウェンディは、迷子の男の子たちにお話を聞かせたり、寝かしつけたり、両親のことをぼんやりとしか覚えていないジョンとマイクルに問題を出して両親のことを思い出させようとしたりした。

 ネヴァーランドには、迷子の男の子たちの他、海賊、先住民、獣たちが住んでおり、抗争を繰り返していた。

 現在の海賊の親方は「黒ひげ号」の水夫長だったジェームズ・フック。「ジョリー・ロジャー号」の船長だ。フックは大海賊バーベキューを従わせたほどの恐ろしさを持つが、かつては、イギリスの貴族が通う名門校の生徒で、身なりを整え、正しい行動や正しい作法にこだわりを持つなど、態度に貴族の片鱗を残している。

 フックの右腕には、鉄の鉤(かぎ)が付いている。ピーターが切り落としたフックの腕を、通りすがりのワニに食べさせてしまったからだ。それ以来、フックの腕が好きになったワニは、陸でもどこでも、フックを追い駆け回している。

 先住民には、やさしい種族もいるが、ピカニニ族は、裸の身体を絵具と油で光らせ、殺した迷子の男の子や海賊の頭の皮を下げている。ピカニニ族の酋長の娘は、斧を振り回し、誇らしげに胸を張る女傑、タイガー・リリー。

 迷子の男の子たちは、ピカニニ族と戦争をしていたが、ピーターが「人魚の入り江」の「置き去り岩」で、海賊に殺されそうになっていたタイガー・リリーの命を助けたことから、ピカニニ族は迷子の男の子たちの味方になった。

 ほか、ネヴァーランドでは、海賊が毒入りのケーキで迷子の男の子たちを皆殺しにしようと目論むも、ウェンディがケーキを迷子の男の子たちから取り上げてしまったり、ピーターがライオンに決闘を申し込んだりしていた。

 そんな中、ある日、ウェンディが、子どもたちが飛んで行ってしまったダーリング夫妻の話をした。ダーリング夫人がいつでも子どもたちが帰って来ることができるように、窓を開けたままにしておいたので、子どもたちは、何年も楽しい時を過ごしたという話だった。その話を聞いたジョンとマイクルがウェンディに「ねえ、おうちに帰ろう」とねだった。ウェンディは2人を抱き寄せた。

 ウェンディは、迷子の男の子たちに、イギリスの家に一緒に来るように誘った。男の子たちは飛び上がって喜んだ。が、ピーターは「ぼくはいかないよ」と告げた。

 ピーターを除くみんなが帰ることに決まった時、海賊たちがピカニニ族に不意打ちの攻撃を仕掛けた。海賊たちも犠牲を出す大戦闘となり、タイガー・リリーは生き残ったわずかな精鋭とともに、海賊たちの囲いを切り開いて逃れた。

 フックの本当の目的は、ピカニニ族ではなく、ピーターと迷子の男の子たちだった。ピカニニ族を襲った後、フックは、太鼓を叩くように命令した。ピカニニ族は戦闘に勝つと太鼓を叩くからだ。太鼓の音を聞いた迷子の男の子たちは、ピカニニ族が勝ったと勘違いして、油断した。フックは、イギリスに帰る迷子の男の子たちやウェンディたちを待ち伏せした。全員が海賊に掴まり、「ジョリー・ロジャー号」に連れていかれた。

 ティンカ・ベルからウェンディたちが海賊に捕まったことを聞いたピーターは、「ジョリー・ロジャー号」へ向かった。

 「ジョリー・ロジャー号」の上で、ピーターとフックは一騎打ちをした。互角の戦いを繰り広げていたが、剣の名手であるピーターの剣がフックの肋骨の間に突き刺さった。自分の血を恐れるフックは、剣を落としてしまい、絶対絶命に陥った。しかし、ピーターはとどめを刺すことをせず、堂々とした身振りで、フックに剣を拾うよう促した。

 フックは、ピーターが正しい作法にのっとって行動したことがやり切れなかった。フックは、ピーターを悪魔のたぐいとしか思っていなかったが、その考えに疑いを持ち、「ピーター・パン。きさまはいったいだれだ、なにものだ?」と聞いた。ピーターは「ぼくは若さだ、喜びだ」、「ぼくは卵から出てきたばかりの小さな鳥なんだ」などと口から出まかせに答えた。

 ピーターとフックの戦いは続いたが、ピーターの剣がフックを体を何度も突き刺し、とうとうフックは、自ら「ジョリー・ロジャー号」から海へ飛び込み、待ち受けるワニの口の中へと落ちて行った。時計の針は深夜の1時半をさしていた。ウェンディは、迷子の男の子たちを海賊のベッドで寝かしつけ、デッキの上をうろうろし、大砲のそばで眠り込んでしまったピーターをしっかりと抱き締めた。ウェンディと迷子の男の子たちは、イギリスへ帰って行った。

 ピーターはティンカ・ベルを連れて、ダーリング夫妻の家に先回りしてい到着した。ピーターは子ども部屋の窓を締めて鍵をしてしまい、「はしゃいで、おどりまわった」。ウェンディたちが帰ってきても部屋に戻ることができなくなってしまったが、ピーターは「悪いことをしているなんて気持ちはまるでなかった」。しかし、ピアノに頭をもたせかけながら涙を流すダーリング夫人の様子などを見るうちに、ピーターは、溢れそうになる涙を飲みこんで、窓の鍵を開けた。「おいで、ティンク。ぼくたちは、お母さんなんてばかなものはいらなんだ」

 子ども部屋に帰ってきたウェンディは、嬉しいニュースはおだやかに知らせた方がよいと考え、ジョンとマイクルに、自分のベッドに入ってしまい、ダーリング夫人が来たらどこにも行かなかったように振る舞うことを提案した。迷子の男の子たち6人も、ダーリング家の養子になった。

 ウェンディは、ピーターも養子になるように説得した。が、ピーターは、「ぼくは大人になんかなりたくないんだ」などと断った。逆に、ウェンディに「ぼくといっしょに、あの小さな家にいこう」と誘った。ウェンディは「いってもいい? お母さん」と尋ねたが、ダーリング夫人は「もういかせません」と断った。ピーターの唇が震えていることに気が付いて、ダーリング夫人は、毎年1回、春の大掃除の1週間だけ、ウェンディをネヴァーランドに行かせると約束した。

 迷子の男の子たちは学校に通うようになり、だんだんと信じることをしなくなった。飛べなくなり、普通の人間になっていった。

 マイクルだけは、昔のように信じていたので、1年後の春にピーターがやってきたとき、ウェンディと一緒にネヴァーランドに行くことができた。が、ピーターは、フック船長のことを忘れてしまっていた。

 翌年、春になってもピーターは迎えに来なかった。マイクルは泣きながら、ウェンディに、「もしかしたら、お姉ちゃん、ピーターなんて人、いないのかもしれない」と告げた。しかし、その次の年には、ピーターはやってきた。それが、ウェンディが少女時代にピーターに会った最後になった。

 大人になったウェンディは、結婚して、ジェーンという女の子の母親になった。ジェーンの部屋は、ウェンディたちがネヴァーランドに飛び立って行ったあの部屋だ。ジェーンはウェンディからピーターの話を聞くことが大好きだった。

 ある春の夜、ウェンディが子ども部屋の暖炉のそばの床で縫物をしていると、窓からピーターがやってきた。ピーターはウェンディを迎えに来たという。しかし、ウェンディは、「わたしはいけないわ」と答えた。ピーターは生まれて初めて恐怖を感じた。「なにが、あったの?」と尋ねた。ウェンディは立ち上がって明かりをつけた。大人になったウェンディを見たピーターは、また、「なにが、あったの?」と叫び、「大人にならないって、約束したじゃないか」とウェンディを責めた。ベッドに寝ているジェーンがウェンディの子どもだと知ると、床に座り込んで泣き始めた。ウェンディは、どうしたらよいか分からなかった。

 ピーターの泣き声でジェーンが目を覚ました。ウェンディは、ジェーンがピーターと一緒にネヴァーランドへ行くことを許した。

 大人になったジェーンは、マーガレットという女の子の母親になった。春になると、すっぽかす年もあったが、ピーターは、マーガレットを誘いにきた。

ピーター・パンとウェンディ(J.M.バリ/芹生一訳)の読書感想文

 「ピーター・パンとウェンディ」を読み終えて、ピーターはどんな男の子なのだろうと思いました。

 ピーターが、「きみはね、ウェンディ、お母さんてものを勘違いしている」と声をかけ、一堂を驚かせる場面がありました。語り手は、「ピーターは、それまでだれにもいわなかったことを、心をひらいて話しはじめた」と前置きして、ピーターのセリフを紹介します。

「ぼくだってむかしは、きみたちと同じように考えていた。お母さんはいつも、ぼくのために窓をあけておいてくれるってね。だから、何か月も、何か月も、何か月も、家に帰らなかったんだ。でも、家に飛んで帰ってみたら、窓はしっかししまっていた。お母さんは、ぼくのことなんか、すっかり忘れちまっていたのさ。ぼくのベッドには、別の小さな男の子が眠っていた」

 語り手は、「これがほんとうにあったことかどうかは、わたしにはわからない。でも、ピーターはそう思い込んでいた」といいます

 ピーターは、かつてはイギリス(?)に住んでいてた男の子で長く家を空けたことで帰る場所を無くしてしまった男の子か、あるいは自身でそう思って疑わない男の子ということになるのでしょうか。

 また、ピーターが悲しむダーリング夫人の姿に触れて、ウェンディたちの部屋の窓の鍵を開ける場面があります。

 なぜ、ピーターは窓の鍵を開けたのだろうと思いました。

 「ぼくだってウェンディが好きなんですからね、奥さん」などというピーターは、それでもダーリング夫人の姿に触れて、「じゃあ、いいや」といい、「あふれる涙をのみこんだ」とあります。「おいで、ティンク。ぼくたちは、お母さんなんてばかなものはいらなんだ」と「自然の掟をあざけるようなことばをわめきちらすと、飛んでいった」とあります

 ピーターはウェンディと好きで、ピーターといっしょにネヴァーランドで暮らしたいと思っていましたが、涙があふれるほどに悲しかったにも係わらず、ウェンディを家に帰してあげました。負け惜しみともいえる言葉を口にしますが、それも、悲しさの裏返しかもしれません。ウェンディといつまでも一緒に暮らしたいけど、ダーリング夫人が悲しむ姿を見て、「じゃあ、いいや」と言ったときの、ピーターの心が知りたいと思いました

 「ピーター・パンとウェンディ」では、ピーターの心理描写はされず、ピーターが、語りに手にも分からない不思議な存在として、描かれていました。なので、読み終えても、そもそもピーターがどんな男の子なのかが分かりません。ピーターがどんな存在なのか、どんな心を持っているのかを、色々と想像してみました。でも、作品の中に手掛かりがほとんど無いので、想像は、あくまでも想像の域を超えることができませんでした。

 でも、そんな謎に満ちたピーターだからこそ、世界中で愛されて、世代や時代を超えて、読み継がれているのかもしれないと思いました。

 ピーターには、作品の中では語られていない物語があるはずです。「ピーター・パンとウェンディ」を名作として残っているのは、ピーターの物語を語らずに読者の想像に委ねているからかもしれないと思いました。


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