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高瀬舟/森鴎外のあらすじと読書感想文

2011年8月27日 竹内みちまろ

高瀬舟のあらすじ

 寛政(1789年-1800年)のころ、30歳程度の弟殺しの罪人・喜助が高瀬舟に乗り、護送役の町奉行所の庄兵衛が、喜助の楽しそうにしている顔が気になり、「喜助。お前何を思っているのか」と声を掛けました。

 喜助が語るところによると、幼いころに両親を流行病で亡くした喜助と弟は、助け合って生きていました。2人で京都の西陣の織場で働いていたとき、弟が病で動けなくなりました。ある日、喜助が仕事から戻ると、弟がのどに剃刀を突き刺した状態で、血だらけになっていました。弟は「早く死んで少しでも兄きに楽がさせたいと思」い、のどを自分で切るも、失敗していました。剃刀を抜けば死ぬことができるので抜いてくれと弟から頼まれますが、喜助は、いったんは、医者を呼びに行こうとします。しかし、「医者がなんになる、ああ苦しい、早く抜いてくれ、頼む」と言われ、弟ののどから剃刀を抜きました。そのとき、近所のおばあさんが、家の中に入ってきました。おばあさんは、「あっ」と言ったきり、表へ出て行きました。

 庄兵衛は、これまでの苦しい生活に比べれば、罪人とは言え、身も食事も保証される島流しのほうが楽だと喜ぶ喜助の姿を見て、俸給が右から左へ流れ、生活費が足りなくなると妻の実家の支援で補っている自分の現状をかえりみます。喜助をいつのまにか「喜助さん」と呼び、喜助の行為をはたして「弟殺し」と呼ぶのだろうかと疑問します。庄兵衛は、自分では判断することができず、権威に従うほかないという気持ちになりました。しかし、奉行の判断をそのまま自分の判断としようと思っても、どこかふに落ちないものがあり、「なんだかお奉行様に聞いて見たくてならなかった」。

高瀬舟の読書感想文

 『高瀬舟』の一番の読みどころは、安楽死についてだと思いました。苦しませないでやりたいという気持ちから行った行動ですが、社会的には「殺人」となりました。延命治療の中止などとは違い、とどめを刺すに等しい能動的な行為だったのですが、気持ちの上では、例えば、現在の判決であれば執行猶予がついても良いのではないかと思いました。しかし、執行猶予がついても良いと思うこと自体が、殺人、あるいは、罪を認めるわけで、喜助の行動は、法的側面、社会的側面、心情的側面、倫理的側面など、いろいろな点から考えることが可能だと思いました。そして、権威について描かれている個所が、まさに、そのことを問題提起しているのだと思いました。また、社会保障、生きがい、権威などのテーマからも、読み直してみたいと思いました。


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