本文へスキップ

読書感想文のページ > 12歳の友情論

12歳の友情論/てんちむ(橋本甜歌)のあらすじと読書感想文

2014年3月3日 竹内みちまろ

 『12歳の友情論』(2006年)は、NHK教育テレビ「天才てれびくんMAX」で人気が大爆発した橋本甜歌(てんか)さんの、小学校卒業を目前に控えたエッセイ集です。

 エッセイ集なので、ストーリーがあるわけではないのですが、本の簡単な内容と感想をメモしておきたいと思います。

 「12歳の友情論」は、「好きなモノ」というエッセイで始まっていました。まことに子どもらしい書き出しですが、具体的な好きなモノとして、お菓子・ケータイ・お財布・iPod・ティッシュ・ガムが挙げられていました。

 特にiPodはお気に入りのようで、ファンからプレゼントされて以来、ずっと愛用しているとのこと。甜歌さんの好きなモノを調べてイベントでプレゼントしてくれるファンのことや、iPodにお気に入りの曲を入れていることなどが記されます。

 iPodの話題の中に、母親が登場しました。「歌を聴いてると、ほんとに気持ちが落ち着くんだ。お母さんとケンカしたりして、イライラしているときも、音楽を聴くと、なんだか落ち着いてくる」とのこと。

 iPodで聴く音楽と共に、無いと生きていけないものが「ケータイ」。「ケータイ」の個所でも、母親とのエピソードが記されていました。

 ケータイはそもそも、「あんたはすぐどっかいなくなるから、心配だし、持っておきなさい」と母親が買い与えたとのことですが、「ケータイが原因でお母さんによく怒られる」とのこと。ケータイが母親に踏まれたため、カメラのレンズが割れていることなども記されています。

 「12歳の友情論」を読んで、甜歌さんは、母親が大好きなのだなと思いました。本の中にも、「家族って、すごい大事」と記されていますが、就寝時間を母親から10時に変更されテレビを見ることができなくなったことや、「もっと女の子らしくしなさい」/「あんたまだ恋もしてないの?」などと言われたり、服のセンスに文句をつけられたりすることなどが記されています。

 甜歌さんは4人家族で、父親は「板金加工所の社長」で忙しく、甜歌さんとはあまり口をきかないようです。母親は、父親の会社で事務の仕事をしています。6歳の弟は幼稚園の年長組。「最近、なんか、お母さんとケンカばっかりで」とこぼしますが、父親は、「ウチとお母さんがケンカしているときも、見てるだけ」

 甜歌さんは、2歳くらいの時から、テレビを見ながら踊ったりしており、母親に、「テレビに出たい、テレビに出たい」と語っていたそうです。母親が新聞の広告で見つけたスクールのオーディションを受けに行き、9歳のときにカルビーポテトチップスのCMでデビュー。「天才てれびくんMAX」で人気が大爆発しました。

 ただ、そんな甜歌さんですが、「フツー」へのあこがれが強いようです。「学校では芸能人扱いされたくない。フツーの小学生として見て欲しいと思うし、友達と遊んでいる時もバレたくない。自分の中では、フツーの橋本甜歌で、テレビとか芸能関係は一切関係なしで見て欲しいのね」と本音をこぼしていました。

 進路についても、母親からは「後がラクだから」という理由で私立を強く勧められたようですが、甜歌さんが頑として譲らず、小学校の友だちといっしょに公立の中学校へ進学することになったとのこと。通うことになる中学校は「フツーの公立の学校」とのことでしたが、「やっと皆と同じとこに行けるようになったんだよね」と母親と衝突した日々を振り返っていました。

 甜歌さんが「フツー」にあこがれるのは、同じ年の友だちといっしょのときは気を使う必要がなく、楽しい時間を過ごすことができるからのようです。一方、大人たちと仕事をする際は、「他の人のこと考えて、まわりの空気読んで動かなきゃでしょ」とのこと。テレビ番組の中ではぶりっこキャラを求められ、母親からは「女の子らしくしなさい」と言われる甜歌さんですが、「ぶりっことかすごい嫌いだから、そういう風になりたくないし、『女の子らしく』なりたいって思ったこともない」といいます。「学校の素のウチみたいな暴言はいたりいしてたら、<天れて>クビになっちゃうんじゃないかなぁ」とも。「ほんと、フツーの女の子でいたい」という文面からは、ため息が伝わってくるようでした。

 「甜歌」とは、「甘い歌声」という意味。「ウチのお母さんは、歌うまんだ」「歌がうまいのも当たり前で、お母さんは昔歌手を目指してたらしい」「だからウチの名前にも『歌』って入れたんだって」「歌手になりたかったけど、お母さん貧乏でなれなかったらしい」などと記しています。

 甜歌さんは、母親が歌手になってほしいと願っていることは感じているようですが、「ウチは、お母さんが歌手になりたかったから、芸能人になったんじゃなくて、自分がなりたくてなった」と書きます。ただ、「応援してくれる人がいるのも、わかってるし」とはしながらも、「グラビア系のモデルとかも、もうやりたくないって何度も思った」と振り返っていました。

 ただ、女の子のファンには増えて欲しいと思っているようです。「こないだの握手会なんて、500人も人いたのに、そのうち女子ふたりだけだったんだよ」とのこと。498人の男性ファンといっしょに過ごす写真集やDVDのイベントなどもこなすようですが、「水着とかミニスカは、やっぱり恥ずかしい…」と、ここだけなぜか「…」付きで記されていました。

 「12歳の友情論」を読み終えた時、甜歌さんは、ものすごく繊細で、気が利いて、頭が良いのだろうなと思いました。周りの大人たちが何を考え、何を期待しているのかを悟り、その期待通りに振る舞うことができてしまうのかもしれません。そんな甜歌さんが「絶対になりたくない大人は、「不良の人」とのこと。「不良にだけはなりたくない。道に座ってタバコ吸ってたり、人を殴ったり」と嫌悪感を示していました。

 「仕事でもらうお金は、お母さんが全部管理してる」そうで、母親に「銀行のお金いくら?」と聞いても、「さぁね」と教えてくれないとのことでしたが、写真集の撮影で海外に行くことが多く、そのたびに、「芸能界でかせいでいるお金」を、アフガニスタンなどの「貧しい人たちにあげたい」と思うそうです。また、ボランティア活動に興味を持っていることも記されていました。

 幼い頃から、ピアノ・スイミング・バレエ・ダンス・ヴォイストレーニングなど多くの習いごとをしてきた甜歌さんですが、芸能界で活躍する一方で、素顔は、繊細な生身の12歳の少女なのだなと思いました。


→ 中学生失格/てんちむ(橋本甜歌)のあらすじと読書感想文


→ 難民高校生/仁藤夢乃のあらすじと読書感想文


読書感想文のページ

運営会社

株式会社ミニシアター通信

〒144-0035
東京都大田区南蒲田2-14-16-202
TEL.03-5710-1903
FAX.03-4496-4960
→ about us (問い合わせ) 



読書感想文のページ