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書評「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(東野圭吾)のあらすじ&読書感想文

2017年3月16日

 今年2017年9月に映画公開予定の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、東野圭吾の長編小説です。私はこれまで東野圭吾の作品をいくつか読んできましたが、同作は、”東野圭吾らしくも、らしくない作品”という印象を受けました。それは悪い意味ではなく、私の中の東野圭吾ランキングで上位トップ3に入ります。

 著者は工学部電気工学科の大学出身の理系人。著者のこれまで発表した作品をみていくと、『ある閉ざされた雪の山荘で』、『容疑者Xの献身』、『流星の絆』などと、推理物や小難しいトリックが多いイメージがあります。理系ならではだな、という印象を抱く作品も多々ありますし、殺人ものも多いのですが、今回ご紹介する『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は殺人はなく殺伐としていなく、泣けるミステリーです。

ナミヤ雑貨店の奇蹟のあらすじ

 三人の青年はコソ泥をはたらき、盗難車で逃走していた敦也(あつや)と、翔太、幸平の三人は、車が動かなくなり、翔太が以前たまたま見つけたという廃屋で一晩、身を潜めることになった。

 表のシャッターの上にある看板には、「雑貨」という文字があった。三人は鍵が壊れている裏口から廃屋にり、一晩を明かすために部屋を物色し、ライトや雑誌を見つけた。

 彼らがやいやい言っていると、表口のシャッターから物音がした。シャッターにある郵便口から封筒が投げ込まれた音だった。

 恐る恐る封筒をとり、裏面をみると、『月のウサギ』と書かれていた。三人は気味悪いと思いながら、封筒を開けた。『初めて御相談いたします』という一文から始まる、相談事を書いた手紙だった。

 その手紙には「ナミヤ雑貨店の噂を」とあり、それに思い当たる節のあった敦也は先ほど見つけた雑誌を開いた。そこにはナミヤ雑貨店の記事が掲載されていて、記事によると、ナミヤ雑貨店は投函された相談に店主が回答することで有名な雑貨店だった。

 しかし、その雑誌は四十年前に発行された雑誌だった。そこから若者三人組と、時空を超えた不思議な手紙のやり取りが始まる―。

ナミヤ雑貨店の奇蹟の読書感想文

 手紙が投函された郵便口があるシャッターが、いわば時空の境界線になっています。

 「時空」や「タイムトラベル」を使った作品ですが、小難しさがなく、ほとんど本を読まない方にも、東野圭吾初心者、または苦手(理系的なテーマや展開が苦手)と感じている方にもおすすめです。

 「時空」は化学的要素ですが、それは小難しいものではありません。中学生のころに化学のレポートでリテイク食らっていた文系の私でも理解できましたから(笑)

 勿論、過去に東野圭吾を読んだことがある方にも読んでほしいですね。過去作品とは趣が違います。(テイストとしては、『時生』に似ているかもしれません)

 また、時空を超えて物語が展開していきますが、ファンタジー感も強くありません。これまた、理系同様にファンタジーが苦手な私でも読めましたので。というか、面白いとしか言いようがない作品です。

 ただ、実写化されると、ただの回想が多い話になるだけじゃないかな、と思ってしまうのですが、そこは脚本と演出次第できっと面白くなるかもしれません。ですが、やっぱり本で読むからこそ面白い部分があのではないか、と私は思います。

 登場人物それぞれの台詞を含め言動の表現からキャラクター像が汲み取れて、脳内で登場人物が仕上がり、頭の中で動き始めます。

 映画化が決定したことで先日再読しましたが、やはり面白かったです。ストーリ性や時空の使い方に、「東野圭吾お見事!」とうなります。

 はられた伏線が回収されたときの爽快さは言葉にもなりません。読み進めているうちに、まるで、バラバラのパズルのピースがハマっていくかのようなまとまり方に快感を覚えます。

 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は長編で、文庫本もなかなかの分厚さで、読むまでに躊躇いを感じるかもしれませんが、全五章の構成でキリよく読みやすいですし、入り込むと気持ちいいほどにすらすらと読みすすめられます。

 そして、ラスト一文に、きっと皆さんも共鳴することでしょう。(佐東未帆



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